コラム

リフォームの原価率に業界平均はありません。国が示した「下回れない線」の使い方

「うちの原価率、だいたい何%が普通なんでしょうか」。工務店・リフォーム会社のご支援で、いちばん多い質問のひとつです。検索すると「リフォーム業の原価率は70%が目安」といった数字が並びます。ところが、その出どころを辿れる公的な統計は存在しません。

一方で2025年12月12日、改正建設業法が完全施行され、原価を下回る金額で契約を結ぶこと自体が、受注する側にも禁止されました。原価率は、経営管理の話から法令の話に変わりつつあります。公的な数字と条文だけを使って、自社の数字の出し方まで整理します。

この記事でわかること

  • 「リフォーム業の原価率の平均」が公的統計に存在しない理由
  • 2025年12月12日から、受注側も原価割れ契約を禁止されたこと
  • 国の言う「通常必要と認められる原価」に何が含まれるか
  • 一般のお客様の工事に引かれた、500万円という線
  • 資材は2020年比で4割超、建設業の給与は3年で7.2%
  • 自社の原価率を出す4つの手順と、広告費の上限へのつなげ方

まず結論|「業界平均の原価率」を探すのは、やめてください

この記事の要点

  • リフォーム業の原価率に、公的な平均値はありません。日本標準産業分類に「リフォーム業」という区分がなく、統計として切り出せないためです。
  • 代わりに国が「下回ってはいけない線」を示しました。2025年12月12日の完全施行で、受注する側も原価割れの契約を結べなくなりました。
  • ただし一般のお客様の工事には線引きがあります。勧告の対象は、原価が500万円(建築一式工事は1,500万円)以上の契約からです。
  • 探すべきは平均ではなく、自社の数字です。粗利率が分からなければ、広告費の上限も決められません。

順に、一次情報を示しながら見ていきます。

なぜ平均が存在しないのか|統計に「リフォーム業」という区分がありません

日本標準産業分類に「リフォーム業」はありません

国の統計は、日本標準産業分類にしたがって集計されます。建設業には「職別工事業」「設備工事業」といった中分類がありますが、「リフォーム業」という区分は存在しません。屋根も内装も水まわりも、別々の工事業に散らばります。

つまり「リフォーム業の売上原価率」を、国が計算したことは一度もありません。「70%が目安」といった数字は、当社が確認した範囲では、根拠の示されているものを見つけられませんでした。

公的統計から取れるものと取れないものを整理した表。取れるのは建設業全体の営業利益率4.5%、欠損法人割合57.2%、資材価格指数、建設業の給与。取れないのはリフォーム業の売上原価率・売上総利益率・適正な粗利率。
図1|リフォームの原価について、公的統計から取れるもの・取れないもの(当社作成)

建設業全体の数字を、自社に当てはめてはいけません

では建設業全体の数字を使えばよいかというと、これも勧められません。数万人規模のゼネコンと、ひとり親方が同じ分類に入っているからです。総務省の令和6年経済センサス‐基礎調査(2024年6月1日現在)では、建設業の事業所400,342か所に対し1事業所あたりの従業者は8.6人。国土交通省の建設業許可業者数調査(令和7年3月末現在)でも、許可業者483,700者のうち個人および資本金1,000万円未満が63.3%です。平均値は、この極端にばらついた分布の真ん中を指しているにすぎません。

※ 63.3%=306,207÷483,700。個人67,277者と、資本金1,000万円未満の4階級を合計して算出しました。

2025年12月12日、原価の話は法律の話になりました

ここからが本題です。2024年6月14日公布の改正建設業法(令和6年法律第49号)が、2025年12月12日に完全施行されました。国土交通省は目的を「適正な労務費等の確保と行き渡りなどのため」と書いています。

国土交通省の報道発表「持続可能な建設業の実現のため、建設業法等改正法が完全施行されます」の画面。令和7年12月12日から完全施行すること、受注者について不当に低い請負代金による契約締結を禁止すること、勧告の対象となる費用の額の下限を500万円(建築一式工事は1,500万円)とすることが記載されている。
画面1|改正建設業法の完全施行を伝える国土交通省の報道発表(令和7年11月14日)

禁止の対象が、発注者から受注者にも広がりました

建設業法には以前から「不当に低い請負代金の禁止」(第19条の3)がありましたが、縛られていたのは注文者側だけでした。今回の改正で、同じ禁止が受注する側にも加わりました(第19条の3第2項)。報道発表の表現では「受注者について不当に低い請負代金・著しく短い工期による契約締結を禁止」。安く受けること自体が、条文上の禁止行為になったということです。

※ 同時に施行されたのは4点で、見積書の記載事項の明記や、発注者への勧告・公表権限の新設も含みます(原文は画面1)。

「通常必要と認められる原価」とは何を指すのか

条文の「通常必要と認められる原価」は、感覚的な言葉ではありません。国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」(第8版・令和8年1月)は、「当該工事の施工地域において当該工事を施工するために一般的に必要と認められる価格(直接工事費、共通仮設費及び現場管理費よりなる間接工事費、一般管理費の合計額)」と定義しています。

読み飛ばしやすいのですが、ここには現場管理費と一般管理費まで入っています。材料費と職人の手間だけを積んだ金額は、国の言う「原価」に届いていません。この2つをどこに置くかで、出てくる原価率はまったく変わります。

国が定義する「通常必要と認められる原価」の内訳図。直接工事費(材料費・労務費・外注費)、間接工事費(共通仮設費・現場管理費)、一般管理費の3層で構成され、この合計が下回ってはいけない線であることを示している。
図2|国が定義する「通常必要と認められる原価」の範囲(出典:国土交通省「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」第8版をもとに当社作成)

見積書に材料費と労務費を書く、という新しいルール

あわせて第20条が改正され、工事の種別ごとに材料費・労務費などを記載した見積書を作るよう努める義務が入りました。その第2項は、記載する材料費等の額が「通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであつてはならない」と定めています。

「適正な労務費」の物差しとして、中央建設業審議会が2025年12月2日に「労務費に関する基準」を勧告しました(建設業法第34条第2項)。工種ごとの労務費の具体値が示されており、2025年12月26日時点で13職種分野99工種。その後も追加・更新が続いています。

国土交通省「労務費に関する基準ポータルサイト」の基準の概要ページ。この基準によって示される「通常必要と認められる労務費(=適正な労務費)」を著しく下回る見積り・契約締結を禁止すること、違反した建設業者には指導・監督を、違反した発注者には勧告・公表を実施することが記載されている。
画面2|「労務費に関する基準」の位置づけ(出典:国土交通省 労務費に関する基準ポータルサイト・2026年9月22日に確認)

見積書が変わるということは、お客様に見せる紙が変わるということです。一式の行を材料費と労務費に割るだけで、他社との違いを説明できます。法令対応が、そのまま営業の材料になります。

ただし、一般のお客様のリフォームには線引きがあります

ここは正確に書きます。「改正建設業法で、お客様から値切られることがなくなる」は誤りです。一般のお客様が発注する住宅リフォームには、2つの線が引かれています。

勧告の対象は「原価500万円以上」からです

あわせて閣議決定された建設業法施行令第6条の2は、勧告の対象となる契約の下限を「500万円(建築一式工事である場合においては1,500万円)」と定めました。この500万円は請負金額ではなく、通常必要と認められる費用の額です。裏を返すと、原価がここに届かない小規模なリフォームは、勧告の仕組みの外にあります。キッチン交換や外壁塗装の多くは入りません。

ガイドラインは個人の住宅を対象外と明記しています

もう1つはガイドライン側の線です。「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン」は対象範囲の注記で、「個人が発注する工事で専ら自ら利用する住宅や施設を目的物とするものに関する取引は含まない。」と書いています。

誤解しやすいので整理します

  • 元請・下請の取引には、そのまま効きます。自社が下請に出す発注も、元請から受ける金額も対象です。
  • 一般のお客様との契約では、行政が動く仕組みは限定的です。勧告の下限とガイドラインの対象外規定が、両方かかります。
  • それでも、原価を把握していない危うさは変わりません。法令以前に、赤字の工事を見分けられません。

※ 許可の線も別にあります。建築一式工事で1,500万円未満または木造住宅で延べ面積150㎡未満、それ以外で500万円未満は「軽微な建設工事」として建設業の許可が不要です(国土交通省「建設業の許可とは」)。第20条は「建設業者」=許可を受けた者が名宛人のため、許可不要の範囲だけで営む事業者には直接には及びません。

原価は、実際にどれだけ上がったのか

資材は2020年から4割以上

日本銀行の企業物価指数(2026年8月速報・2026年9月11日公表)は2020年平均を100とした指数です。木材・木製品148.3、鉄鋼146.6、窯業・土石製品146.4。2020年平均に比べ、木材は48.3%、鉄鋼は46.6%高い水準です。

建設資材の企業物価指数の横棒グラフ。2020年平均を100としたとき、木材・木製品148.3、鉄鋼146.6、窯業・土石製品146.4、金属製品137.7、国内企業物価総平均136.1。
図3|主な建設資材の価格水準(2020年平均=100/2026年8月速報値)

人件費は3年で7.2%、産業平均の1.30倍

厚生労働省の毎月勤労統計調査(事業所規模5人以上・月平均)では、建設業の現金給与総額は2022年の431,562円から2025年は462,801円。3年で7.24%増えました。2025年の調査産業計355,941円に対し、建設業はその1.30倍を支払っています。

建設業の現金給与総額の推移を示す横棒グラフ。2022年431,562円、2023年430,708円、2024年453,559円、2025年462,801円。2025年の調査産業計は355,941円。
図4|建設業の現金給与総額(月平均・事業所規模5人以上)

※ 毎月勤労統計調査の公表前年比は標本の入れ替えを調整した指数ベースのため、実額どうしの単純比と一致しないことがあります。本文の7.24%は2022年と2025年の確報の実額から当社が計算した値です。

それでも営業利益率は4.5%、6割近くが赤字法人

転嫁できているかというと、数字は厳しいままです。財務省の法人企業統計調査(令和6年度・2025年9月1日公表)では、建設業の売上高1,542,685億円に対し営業利益68,755億円。営業利益率4.5%です。国税庁の会社標本調査(令和6年度分・2026年3月公表)でも、法人473,680社のうち271,167社、57.2%が欠損法人でした。「忙しいのに残らない」は、業界全体で起きています。

※ 4.5%=68,755÷1,542,685、57.2%=271,167÷473,680。いずれも公表値から当社が再計算し、公表されている比率と一致することを確認しました。

自社の原価率を出す|4つの手順

平均がない以上、自社で出すしかありません。工務店・リフォーム会社のご支援では、会計ソフトの数字をそのまま使わず、工事単位で組み直すところから始めます。

自社の原価率を出す4つの手順を示した表。手順1は工事台帳を材料費・労務費・外注費に割る、手順2は現場管理費の置き場所を決める、手順3は労務費の基準値と突き合わせる、手順4は粗利率から広告費の上限を逆算する。それぞれ所要の目安を記載。
図5|自社の原価率を出す4つの手順(当社の支援現場での進め方)

手順1|工事台帳を、材料費・労務費・外注費に割る

直近で完工した10件で構いません。1件ずつ、材料費・労務費・外注費の3つに割ります。一式のまま扱っていると、どの工種で利益が出ているかが永遠に見えません。見積書の改正に合わせて、この分解は結局やることになります。

手順2|現場管理費を、どちらに入れるか決める

現場監督の人件費、車両費、現場の消耗品。原価に入れるか販管費に置くかで、原価率は数ポイント動きます。ただし国の定義では、現場管理費は「原価」の側です。法令の線に合わせ、全件で揃えてください。

手順3|「労務費の基準値」と突き合わせる

国土交通省の労務費に関する基準ポータルサイトで、工種ごとの基準値が公開されています。自社が見積書に載せている労務費を、この水準と比べます。下回っているなら、原価が足りないのか、基準の前提条件と施工条件が違うのかのどちらかです。

手順4|粗利率から、広告費の上限を逆算する

ここがマーケティングにつながります。粗利率が決まると、1件の受注にいくらまで広告費を使えるかが決まります。粗利額×広告費比率÷成約率が、1件あたりの許容獲得単価です。逆に言えば、粗利率を知らないまま広告予算を決めている会社は、上限がない状態で走っています。この逆算はGoogle広告の自動入札が今日から変わりますで、住宅会社の数字を使って解説しました。

最初の10件に選ぶ条件

  • 完工して入金まで終わっている工事。途中のものは追加工事の扱いでぶれます
  • 工種がばらけるように選ぶ。水まわりだけ10件では会社全体の姿が見えません
  • いちばん利益が出た工事と、出なかった工事を必ず入れる。幅が分かると議論が早くなります

うまくいかない4つのパターン

原価率の管理がうまくいかない4つのパターンを示した表。一式見積もりのまま、値引きを粗利から出している、相見積もり前提の集客、原価が締めたあとにしか分からない。それぞれ何が起きるかと最初の一手を記載。
図6|原価率の管理が進まない4つのパターン(当社の支援現場での分類)

①一式見積もりのまま出している

「システムキッチン交換工事一式」で出していると、値引きのときにどこを削ったのかが自社でも分かりません。改正法が見積書の記載事項を明記した背景には、この不透明さがあります。

②値引きを粗利から出している

現場で「10万円だけ何とか」と言われたとき、仕入れを下げられないなら、出どころは粗利しかありません。粗利率を把握していない会社ほど、この判断を担当者が単独でしています。

③相見積もり前提の集客をしている

一括見積もりサイトやポータル経由の問い合わせは、はじめから価格で比べられる前提の入り口です。件数ではなく中身を見る視点は問い合わせのCVに営業メールが混ざると、自動入札は歪みますでも扱いました。

④原価が「締めたあと」にしか分からない

月次の試算表が出るのが翌月下旬、という会社は少なくありません。それでは手を打てる工事が終わっています。システムを入れる前に、まず10件を手で計算してください。

よくあるご質問

Q. 原価率は何%を目指せばいいのですか

A. 目標値を外から持ってくること自体を、おすすめしていません。直近10件の実績を出し、いちばん利益が出た工事の原価率を当面の目標に置くのが現実的です。同じ会社・同じ職人・同じ商圏で達成できた数字なので、根拠があります。

Q. 小さなリフォーム中心なら、改正建設業法は関係ないということですか

A. いいえ、関係します。勧告の下限(原価500万円・建築一式1,500万円)や、ガイドラインが個人住宅を対象外としていることは事実です。ただし自社が下請に発注する側に回れば、金額にかかわらず考え方が問われます。

Q. 原価率の計算に、AIは使えますか

A. 集計と分類には使えます。工事台帳の明細を材料費・労務費・外注費に振り分ける作業は、生成AIが得意な領域です。ただし費目の判断基準を決めるのは人の仕事です。業務別の使いどころはリフォーム会社のAI活用ガイドにまとめています。

まとめ|探すのは平均ではなく、自社の10件です

今日やること3つを示した表。直近の完工10件の工事台帳を出す、現場管理費の置き場所を決める、粗利率から広告費の上限を出す。それぞれの所要時間の目安を記載。
図7|今日から始められる3つ(当社の支援現場での進め方)
  • リフォーム業の原価率に、公的な平均値はありません。統計上「リフォーム業」という区分が存在しないためです。出典の示せない目安を基準にしないでください。
  • 国が示したのは平均ではなく、下回れない線です。2025年12月12日から、受注する側も原価割れの契約を禁止されました。その「原価」には現場管理費と一般管理費まで含まれます。
  • 一般のお客様の工事には線引きがあります。勧告の対象は原価500万円(建築一式1,500万円)から。ただし下請への発注は金額を問いません。

原価率は、値引きに耐えられるかを決める数字であると同時に、広告にいくら使えるかを決める数字でもあります。集客のご相談で、当社が最初に粗利率をうかがう理由です。

では、自社の粗利率はいくつであれば回るのか。売上目標から必要な粗利率を逆算し、そこから必要な受注件数・問い合わせ数・広告費まで分解した続編を書きました。年間10億円に必要な問い合わせは2,227件です。リフォーム会社の粗利から逆算しましたをご覧ください。

「広告費をいくらまでかけていいのか分からない」を、数字で決めるところから。

株式会社NEXTORIAは、工務店・住宅会社・リフォーム会社に特化したAI×Webマーケティング支援を行っています。粗利率から許容獲得単価を逆算し、広告予算の上限と、狙うべき問い合わせの質を一緒に決めるところからご支援します。工事台帳の集計を生成AIで軽くする進め方もあわせてご提案します。

AIコンサルティングサービスの詳細を見る

出典

関連コラム

マーケティングのご相談はお気軽に

サービスに関するご質問や資料請求など、
お気軽にご相談ください。

無料相談受付中