コラム

リフォーム会社のAI活用ガイド。業務別の使いどころと費用、そして人が必ず見るところ

「うちもAIを入れたい。ただ、何から手を付ければいいのか分からない」——工務店やリフォーム会社の経営者から、いちばん多くいただくご相談です。やる気の問題ではなく、業務のどこに効くのかが見えていないだけだと感じています。

実際、中小企業がAIを使わない理由の1位は「活用する業務がイメージできない」で63.4%(中小企業白書・n=3,888)。予算やセキュリティより、ずっと手前で止まっています。この記事では、リフォーム会社・工務店の仕事を4つの持ち場に分けて、どこにAIが効いて、月いくらかかり、どこは人が見なければいけないのかを、当社の支援現場の実データと一緒に整理します。

この記事でわかること

  • リフォーム会社のAI活用は「集客・提案・見積・社内」の4つの持ち場に分かれる
  • リフォーム・建設業のAI活用率は20%台から70%台まで割れる。どれを信じるか
  • 施主のほうが先にAIを使い始めている。支援先の住宅会社サイトの実データ
  • AIツールの費用は月0円から。用途別の比較表と、始めるときの費用の目安
  • 当社が実際にやらかした5件から見た「AIに任せてはいけない工程」
  • 無料版と法人版で、入力したデータの扱いはこう違う
  • 社員10〜30名の工務店・リフォーム会社が30日で進める手順

まず全体像|リフォーム会社のAIは、4つの持ち場に分かれる

リフォーム業界でAIというと「提案書が作れる」「完成パースが出せる」といった点の話になりがちです。ですが実際の業務は、問い合わせから引き渡し後のアフターまで一本につながっています。まず全体を4つに分けて見てください。

リフォーム会社の業務を4つの持ち場に分けた図。集客・問い合わせ(ブログ記事の下書き、広告文・LPの文案、Instagramの投稿文、口コミへの返信案)、営業・提案(完成イメージの生成、提案書のたたき台、商談メモの整理、追客メールの文案)、見積・現調(現調メモの文字起こし、仕様書の要約、積算の下ごしらえ、見積書の説明文)、社内・アフター(議事録の要約、社内マニュアル整備、OB顧客リストの整理、問い合わせの一次返信案)。下部に「どの持ち場でも、ここは人が見る」として、金額・数量・寸法の検算、お客様に出す前の事実確認、顧客情報を入れていないかの確認、生成した画像と実物の差の説明の4項目
図1|リフォーム会社のAIは、この4つの持ち場に分かれる

並べてみると、共通点が見えてきます。AIが得意なのは「文章にする」「要約する」「たたき台を出す」の3つだけです。図面を引くわけでも、現場を見に行くわけでも、お客様と信頼関係を作るわけでもありません。

この記事での「AI」の範囲

ChatGPT・Gemini・Claude のような文章を書く生成AIと、完成イメージを作る画像生成AIを指しています。積算ソフトに組み込まれた自動計算や、需要予測のような専用システムは、導入の性質がまったく違うのでこの記事では扱いません。

なぜ今リフォーム業界でAIなのか|職人は増えず、残業もできず、施主はAIで調べてくる

「AIブームだから」ではありません。リフォーム業界に3つの事情が同時に来ているので、後回しにしても状況は良くなりません。

1. 職人も現場監督も、これ以上は増えない

建設業の就業者数は、1997年の685万人から2025年見通しで478万人まで減りました。ピーク比で30.4%減です(国土交通省)。しかも55歳以上が36.6%、29歳以下は11.9%(令和6年平均)。採用で解決する道はほぼ塞がっています。建設業の有効求人倍率は9.16倍(令和6年度)です。

2. 残業で吸収することも、もうできない

2024年4月から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。原則は月45時間・年360時間で、違反は罰則の対象です。特別条項を使っても年720時間が上限になります。

年間総実労働時間の横棒グラフ。建設業1,938時間、製造業1,877時間、全産業平均1,643時間。建設業は全産業平均より295時間長い
図2|建設業の年間労働時間は、全産業より295時間長い(厚生労働省 毎月勤労統計調査・令和6年)

建設業の年間総実労働時間は1,938時間で、全産業平均の1,643時間より295時間長い。1日8時間に換算するとおよそ37日分です。人も増えず残業もできないなら、1人あたりが同じ時間で処理できる量を増やすしかありません。

3. 施主のほうが先にAIを使い始めている

ここが最近いちばん変わったところです。総務省「令和8年版 情報通信白書」によると、日本の個人の生成AI利用経験は58.8%(前年度26.7%/n=1,236)。1年で2倍以上になりました。

住宅の分野でも、戸建住宅の購入検討者のうち28.3%がハウスメーカー選びで生成AIを使って情報収集したという調査があります(伸和エージェンシー×ECマーケティング/n=240)。母数が小さいので断定はできませんが、方向としては疑いようがありません。

つまりAIは「社内の効率化ツール」であると同時に、施主がリフォーム会社を見つける経路そのものになりつつあります。この2つ目の話は、後半で実データと一緒に扱います。

リフォーム・建設業のAI活用率は、調査によって20%台から70%台まで割れる

「リフォーム業界の何割がAIを使っている」という数字を見かけたら、母集団を必ず確かめてください。同じ時期の調査でも、これだけ開きます。

AI活用率の調査比較の横棒グラフ。住宅業界の先行層で生成AIを活用しているが77%(n=441)、全業種平均で生成AIを活用が34%(n=10,312)、建設業の従事者で生成AIを業務で利用が33%(n=1,040)、建設業で生成AIを活用が26%(n=10,312)、中小企業全体でAIを導入済みが20%(n=1,647)
図3|「業界のAI活用率」は調査によって20%台から70%台まで割れる
調査ごとの母集団の違い(2026年8月25日時点で確認)
数字調査主体・n誰に聞いたか
77.4%新建ハウジング×住宅テック9社(n=441)住宅DX専門メディアの読者。AIに関心が高い層に強く偏る
34.5%帝国データバンク(n=10,312)全業種の企業。自己申告の4段階のうち上位2つ
33.1%インフォマート(n=1,040)建設業の従事者個人。企業単位の導入率ではない
26.4%帝国データバンク(n=10,312)建設業の企業。全業種平均より8ポイント低い
20.4%中小企業基盤整備機構(n=1,647)全国の中小企業。生成AI以外のAIも含む

※ 調査主体・設問・母集団がすべて異なるため、厳密な比較ではありません。並べているのは「同じ業界の話でも数字がここまで動く」ことを示すためです。

この5つの中でいちばん誠実に受け止めるべきなのは26.4%だと考えています。母数が1万社を超えていて、業種別に切ってあるからです。一方の77.4%は、DXに関心のある読者に聞いた数字なので業界平均ではありません。ただし「先行している会社はここまで来ている」という意味では読む価値があります。

もう一つ、行動を変える数字を挙げます。「組織的な取り組みはない」と答えた日本の中小企業は45.6%(総務省・令和8年版 情報通信白書)。個人では使っているが、会社の仕組みになっていないという状態が半分近くを占めます。使うかどうかより、会社の型にできるかどうかで差がついている段階です。

この記事の位置づけ

導入率のデータと「成果が出ている会社が何をしているか」は、別の記事で詳しく扱っています。あわせてお読みください:リフォーム事業者の約8割がAIを導入済み。成果を実感する会社が決めている3つのこと

【集客】リフォーム会社が、AIに「推薦される側」になる

「リフォーム AI」で検索して出てくる記事の多くは、ここに触れていません。AIを使う話ではなく、AIに拾われる話です。

Googleの検索結果には「AIによる概要」が出るようになり、Search Console にも生成AI機能での表示回数を見るレポートが付きました。当社で支援先20ドメインを1件ずつ確認したところ、16ドメイン(80%)でこのレポートが提供されていました(2026年8月18日時点)。

Search Consoleの生成AI機能パフォーマンスレポートの画面。3か月の合計表示回数6.62万回、日別の折れ線グラフが表示されている。クリック数・CTR・掲載順位の指標はない
画面1|生成AIレポートにあるのは「表示回数」だけ

支援先の住宅会社サイト1件で、直近3か月(2026年5月23日〜8月22日)の実数を出しました。

横棒グラフ。通常のウェブ検索の表示回数564,000回に対し、生成AI機能の表示回数は66,200回で通常検索の11.7%
図4|生成AI経由の表示は、通常検索の約1割まで来ている

通常のウェブ検索が表示56.4万回・クリック1.17万回に対して、生成AI機能での表示は6.62万回。通常検索の11.7%にあたります。1サイトの数字なので一般化はできませんが、すでに無視できる大きさではありません。

拾われているのは、会社案内ではなくブログ記事だった

Search Consoleの生成AIレポートのページ別一覧。上位10ページの表示回数は15,871回、6,543回、3,655回、3,256回、2,879回、2,496回、2,303回、2,218回、1,915回、1,780回で、URLはすべてblog配下。サイト名はマスクしている
画面2|生成AIに拾われている上位10ページは、すべてブログ記事だった

この結果が示すことは、はっきりしています。

実データから言えること

  • 上位10ページがすべてブログ記事。通常検索でクリック2位のトップページも、8位の会社概要ページも、1つも入っていません
  • 1位のページだけで15,871回=全体の24.0%。上位10ページの合計は42,916回で64.8%を占めます
  • 対象は181ページ。会社案内ではなく、記事が読まれています

生成AIは「この会社は良い会社か」を判断しているのではなく、質問に答えている文章を探しています。だから、施主の疑問にまっすぐ答えた記事が拾われます。「築30年の家の断熱、どこから直すべきか」のような記事です。

つまりAI時代の集客対策は、特別な小細工ではなく「聞かれることに、ちゃんと答えた記事を書く」に戻ります。そしてこの記事を書く作業こそ、AIがいちばん手伝える仕事です。ここで話が一周します。

※ このレポートの読み方と注意点(クエリが取れない、暫定値が点線で出る、エクスポートすると「〜」が0になる、など)はSearch Consoleに「生成AI」が増えた。住宅会社サイトの実データで見る、AI概要に拾われるページの正体で詳しく解説しています。

【提案】リフォームの完成イメージと提案書は、どこまで任せられるか

「リフォーム AI」で検索して出てくる記事の大半が、この領域の話です。実際、需要は大きい。ただし期待値は正しく置いてください。

提案業務でのAIの守備範囲
やることAIの実力人がやること
完成イメージの生成雰囲気を伝えるのは得意実際の寸法・納まりとの差を説明する
提案書のたたき台構成と文章はほぼ出せる金額・仕様・工期の確認
商談メモの整理録音から要点を抜くのは得意言った・言わないに関わる箇所の確認
追客メールの文案感じの良い文面は出せるお客様ごとの事情の反映
相見積もりの比較表項目の整理はできる数字の突き合わせは必ず人が

完成イメージで、いちばん気をつけること

画像生成AIで作った完成イメージは、「こういう雰囲気になります」を伝える道具であって、施工の約束ではありません。生成した画像は実際の梁の位置も配管も無視しますし、建具の寸法も現実離れします。

お客様に出すときの3つの約束

  • 「イメージです。実際の仕上がりとは異なります」と画像に添える。口頭ではなく、書面と画像の両方に
  • 採用しない仕様は出さない。予算内で実現できない建材や照明が写り込むと、後から必ずもめます
  • 現地写真をAIに渡すときは、住所や表札、車のナンバーが写っていないか確認する。他人の個人情報を外部サービスに渡すことになります

1つ目は景品表示法の観点でも大事です。実際より著しく優良に見せる表示は、意図がなくても問題になります。提案書のテンプレートに注記を入れてしまうのが、いちばん確実です。

【見積・現調・社内】地味ですが、いちばん時間が返ってくる場所

派手さはありませんが、当社の支援先の工務店・リフォーム会社で「やって良かった」と言われる率がいちばん高いのはここです。理由は単純で、毎日発生する作業だからです。

建設業の従事者に聞いた調査でも、生成AIを使っている人の用途はメール・文書の作成/校正が54.1%、議事録の作成・自動要約が29.4%、積算・見積・予算作成の補助が17.4%でした(インフォマート/n=1,040のうち利用者344名)。派手な使い方はまだ少数派です。

現調メモの文字起こしと整理

現場でスマホに向かって話したメモを、そのまま報告書の形に整えるところまでAIができます。移動中の10分が、事務所で書く30分を消します。手戻りが少ないのは、記憶が新しいうちに残せるからです。

積算の「下ごしらえ」

ここは表現に気をつけてください。積算そのものをAIに任せるのは、今の段階では勧めません。できるのは、仕様書から必要な項目を拾って一覧にする、前回の類似案件との差分を並べる、といった下ごしらえです。数字は必ず人が入れて、人が検算します。

社内マニュアルと、ベテラン職人の頭の中

建設業は55歳以上が36.6%です。ベテランが持っている判断の基準は、たいてい文章になっていません。ここでAIが効きます。ベテランに30分話してもらって録音し、AIに整理させて、本人に直してもらう。この流れなら、マニュアル作りの心理的なハードルがぐっと下がります。

※ 「文章を書くのが苦手だから作れなかった」という壁がなくなるだけで、社内文書の整備は驚くほど進みます。当社の支援でも、最初の成果はここから出ることが多いです。

AIツール比較と費用|リフォーム会社は月0円から始められる

AI導入の費用が「高そう」という理由で止まっているリフォーム会社は多いのですが、入口は無料です。2026年8月25日時点で、各社の公式料金ページを確認した内容を並べます。

主要な生成AIツールの料金(2026年8月25日・各社公式ページで確認)
ツール無料個人向け有料法人向け向いている用途
ChatGPTありPlus 月20ドルBusiness 1人 月25ドル(年払い20ドル・2人以上)文章全般・要約・たたき台
Google GeminiありAI Plus 月725円/AI Pro 月2,900円(税込)Google Workspace 経由Googleドキュメントとの連携
ClaudeありPro 月20ドル(年払い17ドル)Team 1人 月25ドル(年払い20ドル)長い文章の読み込みと整理
Microsoft 365 Copilot1人 月3,778円(年払い月2,698円相当・税抜)WordやExcelの中で使う
ドル建ての価格は、円建ての請求額が為替と決済方法で変動します。

※ 価格は2026年8月25日に各社公式ページで確認したものです。改定される可能性があるため、契約前に必ず最新の料金ページをご確認ください。Microsoft 365 Copilot は Microsoft 365 Business プランの契約が前提で、上の金額はアドオン分だけです。基本料金が別途かかります。

リフォーム会社が始めるときの費用の目安

リフォーム会社の規模別・現実的な月額費用(当社が支援先にお勧めしている構成)
段階構成月額の目安
試す(1人)無料プランだけ0円
型を作る(1〜2人)有料プラン1〜2人分月3,000〜6,000円
会社で使う(5人)法人プラン5人分月15,000〜20,000円
提案用の画像生成を足す業界向けツールを追加年66,000円〜(月5,500円相当)

数字で見ると、担当者1人の残業を月2〜3時間減らせれば元が取れる水準です。実際、生成AIを使った業務の所要時間削減率は平均16.7%という調査があります(パーソル総合研究所/n=3,000)。

ただし同じ調査に、厳しい数字も並んでいます。「実際に業務時間を削減できた」と答えた利用者は25.4%、4人に1人だけです。しかも空いた時間の61.2%は別の業務に再投入されていました。「AIを入れたら残業が減る」ではなく「AIを入れて、空いた時間の使い道まで決めたら減る」というのが実態に近いと考えています。

AIに任せてはいけない工程|当社が実際にやらかした5件

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい章です。当社は自社の記事もInstagramもニュースレターも、AIを使って制作しています。2026年8月15日から24日までの10日間で、このコラムを6本公開しました(1本あたり平均約8,350字、図表とキャプチャを2〜9点)。当日のニュースを即日記事にしたことも2回あります。

その体制で、人の確認を省いたときに何が起きたかを包み隠さず書きます。他社の失敗談より、こちらのほうが役に立つはずです。

実際に起きた5件

  • ① 自社検証の結論そのものが間違っていた。ある広告ツールについて「選べる地域は19都道府県だけ」と書きかけました。事実ではありませんでした。原因は「検索して確かめず、最初に出たリストを見ただけ」。47都道府県を1件ずつ入れ直したら、日本語では0件・ローマ字なら全件出ることが分かり、記事を全面的に書き直しました
  • ② 画像の左右が、エラーも出ずに切れていた。加工の処理に上限の判定を入れ忘れ、幅を超えた画像の端が黙って欠けました。プログラムは何も言いません
  • ③ 支援先の社名のマスクが足りないまま公開した。文字は隠せていましたが、左のロゴアイコンが残っていました。公開後に気づいて、マスク範囲を広げて差し替えました
  • ④ 記号の表記が、3つの工程で同時に壊れた。本文で6箇所、メモで1箇所、さらに保存先のシステムでも6箇所。機械的なチェックでは1つも検出できず、目で見るまで分かりませんでした
  • ⑤ 入稿画面で本文が丸ごと消えた(2回)。閉じたはずのメニューが画面に残っていて、入力先を奪っていました。1本は最初から作り直しです

共通しているのは「もっともらしく間違える」こと

5件を並べて分かるのは、AIの間違いは派手に失敗しないということです。エラーも警告も出ません。①は文章として自然でしたし、②の画像は一見きれいでした。だから、機械のチェックをすり抜けます。

OpenAI が自社で公表している評価でも、モデルの誤り率は評価の仕方によって0.8%から40%超まで変動します(GPT-5 System Card・2025年8月)。「AIは何%間違える」と一言で言える性質のものではありません。

国のガイドラインも、この前提に立っています。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」には、「AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させる利用を検討する」と書かれています。

だから、この4つは必ず人が見る

省いてはいけない確認

  • 金額・数量・寸法は必ず検算する。当社は記事に載せる数字を、別の計算方法でもう一度出して一致するか確かめています
  • お客様に出す前に、事実かどうかを確認する。特に「〜がない」「〜だけ」という否定形の主張は危ない。①がまさにそれでした
  • 顧客情報が入っていないか確認する。画像に写り込む住所や表札も含みます
  • 出す直前に、人の目で全体を見る。③④⑤は、これだけで防げました

もう1つ、当社の実績から言えることがあります。他社の原稿を記事にする過程で、数字や結論の誤りを7件訂正しました。出典が違っていた、平均値を個別の値のように書いていた、公式の記述と業界の通説がずれていた——いずれも元の資料に当たり直して初めて分かったことです。AIは資料を探すのは速いですが、「この資料を信じてよいか」の判断は人の仕事です。

情報漏えい|無料版と法人版で、扱いはこう違う

「お客様の図面や見積を入れても大丈夫か」は、リフォーム会社から必ずいただくご質問です。結論から言うと、無料版に顧客情報を入れるのはやめてください。各社の公式な記載を並べます。

入力したデータが学習に使われるか(2026年8月25日・各社公式ページで確認)
ツール個人向け(無料・個人課金)法人向け
ChatGPT「モデルの学習に使うことがある」と明記。設定でオプトアウト可Business / Enterprise / API は既定で学習に使わないと明記
Gemini「一部の会話は人間のレビュアーが確認する」と明記。「見られたくない機密情報は入力しないでください」ともGoogle Workspace のデータは許可なく学習に使わないと明記
Claude設定で学習利用のオン・オフを切り替え可能商用プランは既定で学習に使わないと明記

※ いずれのツールも、フィードバック(良い・悪いの評価)を送信すると、その会話が対象になる場合があります。各社の記載は変更されるため、契約前に最新のヘルプをご確認ください。

特に注目していただきたいのはGeminiの無料版です。公式のプライバシー説明に、会話の一部を人間のレビュアーが読むことがあると書かれています。同じ「Gemini」でも、Google Workspace 経由の法人版では明確に否定されています。同じ名前のサービスでも、契約の種類で扱いがまったく違うということです。

デジタル庁のガイドラインは、行政向けながら分かりやすい基準を示しています。「不特定多数の利用者に対して提供されるクラウドサービス型の生成AIシステムを業務で利活用する場合には、原則として要機密情報を取り扱うことはできない」。個人情報保護委員会も2023年6月に、入力した個人情報が学習に使われて出力されるリスクを注意喚起しています。

社内ルールは、この3行から始めてください

  • お客様の氏名・住所・電話番号・図面は入れない。入れる必要があるときは、伏せ字にしてから入れる
  • 会社として使うツールを1つに決めて、そのプランを法人向けにする
  • AIが出したものを外に出す前に、誰が確認するかを決めておく

明日から始める|工務店・リフォーム会社の30日ロードマップ

リフォーム会社のAI導入でいちばん多い失敗は「全社にアカウントを配って終わり」です。使う人と使わない人に分かれて、3か月後には誰も話題にしなくなります。順番があります。

30日ロードマップの図。第1週は業務を1つだけ決める(毎週必ず発生する、文章を書く仕事、外に出す前に人が見る)、第2週は1人が試して型を作る(同じ指示文を3回使う、うまくいった指示を保存、かかった時間を記録)、第3週は社内ルールを1枚に(入れてよい情報の線引き、確認する人を決める、使うツールを1つに絞る)、第4週は2人目に渡して測る(第2週の記録と比べる、続けるか替えるか決める、次の業務を1つ足す)
図5|社員10〜30名の会社が、30日でやること

最初の1つに選ぶ業務の条件

  • 毎週必ず発生する。月に1回の仕事だと、型ができる前に忘れます
  • 文章を書く仕事。判断が主体の仕事から入ると、うまくいきません
  • 外に出す前に人が見る。間違いが直る仕組みが元々ある業務から始めます

この3つを満たすのは、たとえばブログ記事の下書き、施工事例の紹介文、口コミへの返信案、現調メモの清書です。逆に、見積書の金額や契約書の文面は最初の1つには向きません。

第2週の「かかった時間を記録する」を飛ばさないでください。効果を測る指標を決めていない導入は、続ける理由も止める理由も作れません。これは中小企業がAIで失敗する典型です。記録といっても、「今週はこの作業に何分かかった」をメモに残すだけで十分です。

リフォーム会社の事務所で、経営者と若手スタッフがノートパソコンを見ながら業務の進め方を話し合っている様子
最初の1か月は1人でいい。全社に配るのは、型ができてからです

よくある質問

Q. リフォーム会社におすすめのAIツールは結局どれですか?

最初の1つなら、無料のChatGPTかGeminiで構いません。文章を書く用途で始めるなら、性能の差より「毎日開く習慣がつくか」のほうがずっと効きます。社内でGoogleドキュメントを使っているならGemini、それ以外ならChatGPT、くらいの選び方で十分です。会社として本格的に使う段階になったら、法人プランに切り替えてください。データの扱いが変わります。

Q. AIが絶対にできないことは何ですか?

現場を見ることと、責任を取ることです。床下の状態も、お客様が言葉にしていない不安も、AIには分かりません。生成した見積が間違っていたときに責任を負うのも会社です。そしてAIは「知らない」と言うのが苦手で、もっともらしく間違えます。だから金額・数量・寸法は人が検算します。

Q. AIに仕事を奪われませんか?

リフォーム・工務店の仕事に限って言えば、近い将来にそうなる兆しは見えません。建設業の有効求人倍率は9.16倍で、人が足りていないのが実情です。奪われるのは職種というより作業で、文字起こしや清書のような「書き写す仕事」から順に減っていきます。むしろその時間を現調と提案に回せるかどうかが、これからの差になると考えています。

Q. AIが書いた文章は、SEO的に不利になりませんか?

不利にはなりません。Googleは制作方法ではなく内容の有用性で評価すると明言しています。ただし「AIに丸投げして中身のない記事を量産する」のは別問題で、これは評価されません。実データの章で見たとおり、生成AIに拾われていたのは施主の疑問に具体的に答えている記事でした。

Q. 社員がAIに詳しくないのですが、大丈夫でしょうか?

詳しい必要はありません。必要なのは「やってほしいことを日本語で説明する力」で、これは部下に仕事を頼むのと同じ能力です。むしろベテランほど、仕事の手順を言葉にできるので上手に使えます。最初の1か月は1人でいいというのは、そういう理由です。

Q. AI導入の費用対効果はどう測ればいいですか?

時間で測ってください。「この作業に何分かかっていたか」を導入前に記録し、1か月後に同じ作業で測ります。売上への影響は要因が多すぎて切り分けられません。月3,000円のプランなら、担当者の残業が月2〜3時間減れば十分です。

まとめ|業務を1つ決めるところから

この記事の要点

  • リフォーム会社のAIの持ち場は4つ。集客・提案・見積・社内。得意なのは「文章にする」「要約する」「たたき台を出す」の3つだけ
  • リフォーム・建設業のAI活用率は20%台から70%台まで割れる。母数1万社超の建設業26.4%がいちばん実態に近い
  • 施主のほうが先にAIを使っている。支援先サイトでは生成AI経由の表示が通常検索の11.7%、拾われた上位10ページはすべてブログ記事
  • AIの費用は月0円から。本格運用でも5人で月15,000〜20,000円。残業が月2〜3時間減れば元が取れる
  • 人が必ず見るのは4つ。金額の検算、事実確認、顧客情報、出す直前の目視
  • 無料版に顧客情報を入れない。Geminiの無料版は「人間が読むことがある」と公式に書かれている
  • 最初の1か月は1人で、業務も1つ。全社への配布はその後

リフォーム会社がAIを入れるかどうかは、もう論点ではなくなりました。個人では6割近くが使っていて、施主も検討の入口で使っています。残っている論点は「会社の仕事として、どこまで型にできるか」だけです。日本の中小企業の45.6%が「組織的な取り組みはない」と答えているのは、そういう意味です。

その一歩目は、大きな投資でも全社研修でもありません。毎週必ず発生していて、文章を書いていて、外に出す前に人が見る業務を1つ選ぶ。それだけです。当社がこのコラムを10日で6本書けているのも、同じやり方の延長線上にあります。

「どの業務から始めればいいか分からない」を、一緒に決めるところから。

株式会社NEXTORIAは、工務店・住宅会社・リフォーム会社に特化したAI×Webマーケティング支援を行っています。業務の棚卸しから、最初の1つの選定、社内ルールの整備、AI検索で拾われる記事づくりまで、マーケティングチームが伴走します。累計60社を超えるご支援のなかで蓄積した、住宅・リフォーム業界に固有の型をそのままお使いいただけます。

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