コラム

リフォーム事業者の約8割がAIを導入済み。成果を実感する会社が決めている3つのこと

「うちもそろそろAIを、と話はしているのですが……」——工務店・リフォーム会社の経営者の方とお話ししていると、いまだにこの入り口から始まる場面が少なくありません。ところが業界の実測データを見ると、状況はすでにその段階を追い越しています。リフォーム事業者52社のうち、約8割がAIを業務に導入済み、または試験導入中。「様子見」は、もう少数派になりつつあります。

本記事では、リフォーム産業新聞が2026年6月に公表した調査結果を読み解きながら、成果を実感している会社が何を決めているのか、そして導入したのに定着しない会社が何でつまずいているのかを、具体的な進め方まで落とし込んで解説します。

この記事でわかること

  • リフォーム事業者52社のAI導入状況(実数つき)
  • 成果を実感している企業が使っている3つの領域
  • 課題として挙がった「使いこなし」「精度不足」の正体と対処法
  • 成果が出ない導入に共通する4つの失敗パターン
  • 明日から始められる、定着までの5ステップ

調査データ|リフォーム事業者52社の約8割が、すでにAIを業務に入れている

リフォーム産業新聞がリフォーム事業者52社を対象に実施した「AI活用実態調査」で、約8割がAIを業務に導入済み、または試験導入中であることが分かりました。内訳は以下のとおりです。

リフォーム事業者52社のAI導入状況を示す横棒グラフ。すでに活用している67%(35社)、試験導入中10%(5社)、興味はあるが未着手19%(10社)、活用予定なし4%(2社)
図1|リフォーム事業者52社のAI導入状況(出典:リフォーム産業新聞)
リフォーム事業者52社のAI導入状況
回答区分社数構成比
すでに活用している35社67%
試験導入中5社10%
興味はあるが未着手10社19%
活用予定なし2社4%
導入済み+試験導入中40社約8割

※ 構成比は小数第一位を四捨五入。出典:リフォーム産業新聞「リフォーム事業者のAI活用実態調査」(n=52)

注目すべきは「活用予定なし」が4%しかないこと

この調査でいちばん効くのは、実は「8割」という数字ではありません。「活用予定なし」がわずか2社・4%だったという点です。

つまり、AIを使うかどうかを議論しているフェーズは、業界としてすでに終わっているということになります。残る96%は「もう使っている」か「使うつもりでいる」かのどちらかです。社内でAI活用を提案する際、この数字は「まだ早いのでは」という声に対するもっとも短い回答になります。同業他社はすでに動いている、という状況です。

そしてもう一つ見ておきたいのが「興味はあるが未着手」の19%(10社)。この層は、意思決定の問題ではなく始め方が分からないことで止まっているケースがほとんどです。後半の「5ステップ」は、まさにこの位置にいる会社に向けた内容です。

利用企業の約8割が「成果を実感」。使われているのは営業・集客・設計

同調査では、すでに利用している企業のうち約8割が「成果を実感している」と回答しました。主な活用領域として挙がったのは営業・集客・設計の3領域です。

「導入したかどうか」ではなく「成果が出ているかどうか」で8割という数字が出ている点が重要です。話題性で触ってみた段階ではなく、業務に組み込んで効果が見えている会社がすでに多数派になっているということになります。

なぜ営業・集客・設計から始まるのか

この3領域には共通点があります。「文章や画像をゼロから作る作業」と「散らばった情報を探して整理する作業」の比率が高いことです。これはまさに、現在の生成AIがもっとも安定して成果を出せる領域と重なります。

リフォーム会社・工務店における領域別のAI活用例
領域具体的な使い方効きやすい理由
営業 提案書・見積書の下書き/ヒアリングメモの要約/商談後のお礼メール/過去見積の条件検索/FAQ回答の統一 担当者ごとに品質がバラつきやすい作業。たたき台の質が上がると、全体の底上げになる
集客 ブログ記事・施工事例ページの原稿/Instagram投稿文/イベントページの文章/広告のキャッチコピー案/施工写真のAI加工 「更新が止まる」がほぼ唯一かつ最大の課題。制作時間が縮むだけで継続率が変わる
設計 プラン検討のたたき台/内装イメージの生成/仕様・建材の比較整理/法規・補助金要件の下調べ 案を「複数出す」コストが劇的に下がる。打ち合わせでの提示数が増える

逆に言えば、この3領域に手を付けずに「AI導入」を検討しても、効果は見えにくいということでもあります。最初に触るべき業務は、すでに業界の実測データが示してくれています。

業界横断のデータと比べても、リフォーム業界は遅れていない

総務省「令和7年版 情報通信白書」によれば、何らかの業務領域で生成AIを活用している日本企業の割合は55.2%、生成AIを「積極的に活用する方針」「活用検討の上で活用する方針」と回答した企業は合計49.7%(2023年度は42.7%)でした。

AI活用率の比較棒グラフ。リフォーム事業者(導入済み+試験導入中)76.9%に対し、日本企業全体で何らかの業務に生成AIを活用しているのは55.2%
図2|リフォーム事業者と日本企業全体のAI活用率(出典:リフォーム産業新聞/総務省「令和7年版 情報通信白書」)

※ 調査主体・対象・設問の定義が異なるため厳密な比較ではありません。業界の温度感を掴むための目安としてご覧ください。

母数も定義も違うので単純比較はできませんが、少なくとも「住宅・リフォーム業界はIT活用が遅れているから、うちはまだ大丈夫」という前提は、もう成立しないということは言えます。

それでも残る2つの課題「現場での使いこなし」「精度不足」

一方で同調査では、「現場での使いこなし」「精度不足」といった課題も浮き彫りになったと報じられています。導入したものの定着しない、出てきた内容の確認に手間がかかる——そういう段階の企業が一定数あるということです。

この2つは、実は性質のまったく違う課題です。分けて考えると、対処法もはっきりします。

リフォーム会社の事務所で、AIが作成した施工事例の原稿をノートPCで確認する営業担当者
AIの出力は「よく書けた下書き」。人が確認する工程を業務フローに組み込むことが前提になる

課題1:「使いこなし」はツールの問題ではなく、社内ルールと教育の問題

「現場が使ってくれない」というご相談をいただいたとき、原因がツールの性能にあったケースは、私たちの支援経験ではほとんどありません。大半は「誰が・どの業務で・どこまで使うのか」が決まっていないことが原因です。

全社員にアカウントを配って「自由に使ってみてください」と伝えた場合、実際に使うのはもともと関心のあった数名だけで終わります。人は、業務手順として組み込まれていないことを日常的にはやりません。

逆に、次のような3行のルールを決めるだけで、定着率は大きく変わります。

定着させるための3行ルール(例)

  1. 誰が使うか:施工事例ページの原稿は、営業部の◯◯さんが作成する
  2. どの業務で使うか:現場写真+工事概要メモをAIに渡し、原稿のたたき台を出す
  3. どこまで使うか:出てきた原稿は必ず担当者が加筆・確認し、公開前に所長が承認する

ポイントは「使ってみて」ではなく「この業務は、この手順でやる」と業務フローそのものを書き換えることです。AI導入は、ツール導入ではなく業務設計の話だと捉えたほうがうまくいきます。

課題2:「精度不足」は、人が確認する前提の業務フローで消える

もう一つの「精度不足」。これは、AIの出力をそのまま使う前提で設計してしまっているときに致命傷になります。

現時点の生成AIは、「よく書けた下書きを、圧倒的な速さで出してくる存在」と捉えるのが実務的に正確です。完成品を出す装置ではありません。したがって、AIの出力をそのまま使わず、必ず人が確認する前提の業務フローを組むことが前提条件になります。

この前提さえあれば、精度は導入をためらう理由になりません。むしろ「ゼロから書く」から「確認して直す」に作業の中身が変わることが、時間短縮の本体です。

確認する項目を固定しておくと、チェック作業自体も早くなります。

AI出力の必須チェック項目
確認する項目具体例
数字金額・面積・工期・築年数・補助金の上限額
固有名詞お客様名・地名・商品名・メーカー名・自社の表記
事実関係工事内容、使用建材、法規・補助金の要件と期限
言い切り表現「必ず」「絶対に」「日本一」など、根拠のない断定・優良誤認
自社らしさお客様への呼びかけ方、社としてのトーン

※ 特に補助金・制度に関する記述は、AIの知識が古い可能性があります。必ず公式サイトの最新情報で確認してください。

成果が出ないAI導入に共通する4つのパターン

参考までに、業界を問わない大きな数字も紹介します。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが2025年に公表したレポートでは、企業の生成AI導入プロジェクトの約95%が、測定可能な収益貢献に至っていないと報告され、大きな話題になりました。

「8割が成果を実感」というリフォーム業界の数字と一見矛盾しますが、調査対象も「成果」の定義も違います。むしろ両方を並べると、成果が出るかどうかは、AIの性能ではなく導入の仕方で決まるという同じ結論に行き着きます。

私たちが工務店・リフォーム会社のご支援をするなかで繰り返し見てきた、成果が出ない導入の共通パターンは次の4つです。

パターン1:全社に配って終わり

アカウントを配布した時点を「導入完了」と考えてしまうケース。実際には、そこからが始まりです。配布は手段であって、業務が変わって初めて導入と言えます。

パターン2:業務を決める前にツールを選ぶ

「どのAIがいいですか」というご質問をよくいただきますが、順番が逆です。先に「どの業務の、どの工程を置き換えるか」を決めれば、必要なツールは自動的に絞られます。業務が決まっていない状態でツールを比較しても、決め手が見つかりません。

パターン3:出力をそのまま使う/逆に全部作り直す

両極端がどちらも失敗します。そのまま使えば品質事故になり、全部作り直せば時間短縮になりません。「7割の完成度で出してもらい、残り3割を人が仕上げる」という役割分担を明文化しておくことが、実務上もっとも安定します。

パターン4:効果を測る指標を決めていない

「なんとなく楽になった気がする」で終わると、担当者が異動した瞬間に元に戻ります。導入前に、その業務にかかっていた時間を測っておくこと。施工事例1本の原稿作成に何時間かかっていたか、ブログを月に何本公開できていたか。この数字がないと、続ける理由も改善の方向も見えません。

明日から始める|AI活用を定着させる5ステップ

「興味はあるが未着手」の状態から抜けるための、現実的な進め方です。最初から全社展開を狙わないことが、遠回りに見えていちばんの近道です。

ホワイトボードの前で業務の棚卸しをするリフォーム会社のスタッフ3名
最初にやるのはツール選定ではなく、業務の棚卸し。どの作業に時間がかかっているかを可視化する
AI活用を定着させる5ステップ
ステップやること期間の目安
1. 業務の棚卸し 「文章を書く」「情報を探す」「資料を作る」作業を書き出し、月間の所要時間を概算する 1週間
2. 対象業務を1つに絞る 時間がかかっていて、かつ失敗しても事故になりにくい業務を1つ選ぶ(例:施工事例ページの原稿) 1日
3. 手順とチェック体制を1枚にする 担当者・入力する材料・AIへの指示文・確認者・確認項目をA4用紙1枚にまとめる 2〜3日
4. 4週間走らせて、時間を測る 1本あたりの所要時間と公開本数を記録。指示文は毎回少しずつ改善していく 1ヶ月
5. 横展開する 効果が確認できたら、同じ型で次の業務(ブログ/Instagram原稿/提案書)へ広げる 2ヶ月目以降

最初の1つに選ぶ業務の条件

  • 毎月必ず発生する(単発の業務は型ができない)
  • 今、明らかに時間がかかっている
  • 公開前に人のチェックが必ず入る(=事故になりにくい)
  • 効果を数字で測れる(本数・時間など)

この4条件を満たす業務は、多くのリフォーム会社で「施工事例ページの原稿作成」です。写真と工事概要というインプットが必ず手元にあり、成果物の型が決まっていて、集客にも直結します。

よくある質問

Q. 社員がAIに詳しくないのですが、大丈夫でしょうか?

問題ありません。むしろ現在のAIツールは、専門知識よりも「その業務に詳しいこと」のほうが成果に直結します。施工の中身が分かっている人が、出てきた原稿の間違いに気づけるからです。必要なのはITスキルではなく、業務手順を決めることと、最初の1ヶ月だけ伴走することです。

Q. お客様の情報を入力しても大丈夫ですか?

「入力してよい情報の範囲」を先に決めてください。実務的には、お客様の氏名・住所・連絡先は入力せず、「A様邸」などに置き換える運用が安全かつ現実的です。加えて、法人向けプラン(入力内容が学習に使われない設定のもの)を選ぶこと、その方針を社内ルールとして文書化しておくことをおすすめします。

Q. AIが書いた文章は、SEO的に不利になりませんか?

Googleは、コンテンツの評価基準を「どうやって作ったか」ではなく「読者にとって役に立つか」としています。不利になるのは、検索順位の操作だけを目的に量産された中身のないページです。自社の施工実績・自社の考え方という一次情報が入っていて、人の確認を経ている記事であれば、制作にAIを使っていること自体が問題になることはありません。

Q. どのくらいの費用感で始められますか?

ツール自体は、法人向けの生成AIサービスで1人あたり月数千円程度が相場です。実際にコストがかかるのは、業務フローの設計と最初の定着支援の部分です。逆に言えば、ツール費用よりも「誰が設計するか」のほうが、成果を大きく左右します

まとめ|数字が示しているのは「始めるかどうか」ではなく「どう定着させるか」

今回の調査から読み取れることを、3点に整理します。

  • 「活用予定なし」は4%。AIを使うかどうかの議論は、業界としてほぼ終わっている
  • 利用企業の約8割が成果を実感。使われているのは営業・集客・設計の3領域
  • 残る課題は「使いこなし」と「精度不足」。前者は社内ルールと教育、後者は人が確認する前提の業務フローで解決できる

裏を返せば、いま差がついているのはAIを導入したかどうかではなく、AIを業務として定着させられたかどうかです。そしてその差は、ツールの選定ではなく、「誰が・どの業務で・どこまで使い、誰が確認するか」を決めきれたかどうかで生まれています。

「では、具体的にどの業務でどう使い、月いくらかかるのか」を決める段階に来ている方は、リフォーム会社のAI活用ガイドもあわせてお読みください。集客・提案・見積・社内の4つの持ち場ごとに使いどころを整理し、ツールの費用比較と、当社が実際にやらかした5件から見た「人が必ず確認するところ」まで書いています。

「どの業務から始めればいいか分からない」を、一緒に決めるところから。

株式会社NEXTORIAは、工務店・住宅会社・リフォーム会社に特化したAI×Webマーケティング支援を行っています。AIツールの紹介にとどまらず、業務の棚卸し・対象業務の選定・手順とチェック体制の設計・月次での効果測定まで、マーケティングチームが伴走します。累計60社を超えるご支援のなかで蓄積した、住宅・リフォーム業界に固有の型をそのままお使いいただけます。

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