コラム

年間10億円に必要な問い合わせは2,227件です。リフォーム会社の粗利から逆算しました

「年商10億円を目指したい」。工務店・リフォーム会社のご支援で、よくお聞きする目標です。ところが「そのために問い合わせが何件必要か」まで数字にしている会社は、ほとんどありません。広告費も「売上の何%か」で決められていることが多いのが実際です。

この記事では、10億円という目標から逆算して、必要な受注件数・問い合わせ数・広告費・粗利・経常利益をすべて数字で出します。使うのは公的統計と、四則演算だけです。結論から書くと、広告費の総額は単価では決まりません。粗利で決まります。

この記事でわかること

  • 10億円に必要な受注件数と問い合わせ数(単価3パターン)
  • 粗利率と販管費の組み合わせで、営業利益がどう決まるか
  • 建設業全体の経常利益率5.4%に並ぶのに必要な粗利率
  • 粗利から逆算した、受注1件と問い合わせ1件の許容単価
  • 全件を5%値引きすると営業利益がどうなるか
  • 仮置きの数字を、自社の数字に差し替える順番

まず結論|広告費は単価ではなく、粗利で決まります

この記事の要点

  • 単価が5倍違っても、年間の広告費は5,000万円で変わりません。広告費は粗利の総額から決まるためです。変わるのは問い合わせ1件にいくらかけられるかで、2.2万円から6.0万円まで開きます。
  • 必要な問い合わせ数は、単価300万円なら年2,227件(月186件)です。単価1,500万円なら年838件(月70件)まで減ります。
  • 粗利率が1ポイント落ちると、営業利益が2割消えます。売上10億円なら1ポイント=1,000万円。営業利益5,000万円に対しての1,000万円です。
  • 全件を5%値引きすると、営業利益はゼロになります。1件あたり15万円の値引きが、334件積み上がるとこうなります。

以下、すべて売上10億円・粗利率25%・販管費2.0億円を中心のモデルとして計算します。この3つの数字の置き方も、あとで根拠を示します。

前提|「業界平均の粗利率」は、やはり存在しません

最初にお断りしておきます。この記事に出てくる粗利率25%は、業界平均ではありません。当社は以前、リフォームの原価率に業界平均はありません。国が示した「下回れない線」の使い方で、リフォーム業の原価率に公的な平均値が存在しないことを確かめました。日本標準産業分類に「リフォーム業」の区分がないためです。

公的統計から取れる数字と取れない数字を整理した表。建設業の営業利益率4.5%と経常利益率5.4%は取れる。欠損法人割合57.2%も取れる。リフォーム業の粗利率と成約率は取れない。
図1|この記事で使った公的統計と、公的統計に無いもの(2026年9月時点)

公的統計から取れるのは、利益率のほうです

財務省の法人企業統計調査(令和6年度)によると、建設業の売上高は1,542,685億円、営業利益は68,755億円、経常利益は83,586億円です。ここから割り算すると、営業利益率4.5%、経常利益率5.4%になります。

一方、国税庁の会社標本調査(令和6年度分)では、建設業の法人473,680社のうち271,167社が赤字です。欠損法人の割合は57.2%。半分以上が赤字という分布のなかでの、平均5.4%です。

※ これは建設業全体の数字です。ゼネコンからひとり親方までが同じ分類に入っているので、リフォーム会社の実態とは一致しません。この記事では「目標として超えたい線」としてだけ使います。

だから「平均」ではなく「必要水準」を逆算します

粗利率の平均が無いなら、平均を探すのをやめればいい、というのがこの記事の立場です。代わりに「自社が回るために必要な粗利率はいくつか」を逆算します。これは平均と違って、自社の固定費さえ分かれば必ず計算できます。

逆算の順番|利益から決めて、粗利率に戻します

逆算の5ステップを示した表。1人件費から販管費を置く、2目標利益を決める、3必要な粗利額を出す、4粗利率に戻す、5受注件数と問い合わせ数に割る。
図2|この記事で使っている逆算の順番(当社の手順)

①販管費を、人件費から置く

販管費のいちばん大きい項目は人件費です。ここは公的な実額が使えます。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、2025年の建設業の現金給与総額は月462,801円(事業所規模5人以上・月平均)。年間では5,553,612円です。

これに会社負担の社会保険料が乗ります。厚生年金保険料率18.3%の労使折半で9.15%、健康保険が約5%、雇用保険と労災保険であわせて約1%。ざっと15%ほど上乗せして、1人あたり約639万円と置きます。

販管費2.0億円のうち6割が人件費だとすると1.2億円。1.2億円 ÷ 639万円で、おおよそ19人という規模感になります。売上10億円を19人で回す、という絵です。

※ 社会保険料の会社負担率は、健康保険が都道府県・保険者によって、雇用保険と労災保険が業種によって変わります。約15%は概算です。正確な数字は自社の給与台帳から出してください。

②粗利率と販管費の組み合わせで、営業利益が決まる

あとは引き算です。売上10億円 × 粗利率 − 販管費 = 営業利益。組み合わせを並べると、こうなります。

粗利率と販管費の組み合わせで営業利益がどうなるかを示した表。粗利率25%・販管費2.0億円で営業利益5,000万円。粗利率20%・販管費2.0億円で営業利益ゼロ。
図3|粗利率×販管費で決まる営業利益(売上10億円・当社による試算)

表を見ると、粗利率20%では販管費2.0億円で営業利益がゼロになります。粗利率25%・販管費2.0億円なら営業利益5,000万円で、営業利益率は5.0%です。

建設業全体の5.4%に並ぶには、粗利率25.4%

ここで先ほどの公的統計に戻ります。建設業全体の経常利益率は5.4%でした。営業外損益を±ゼロと置くと、10億円で5.4%を出すには経常利益が約5,418万円必要です。販管費2.0億円のままなら、必要な粗利は2億5,418万円。粗利率にして25.4%です。

つまり粗利率25%では、建設業全体の平均的な利益率にわずかに届きません。0.4ポイント足りない。金額にして418万円です。このくらいの精度で「足りない/足りている」が言えるようになるのが、逆算の効き目です。

単価が変わると、何が変わるのか

ここから本題です。同じ10億円でも、1件あたりの単価で景色がまったく変わります。3つの単価帯で並べました。

単価3パターンの逆算表。単価300万円は受注334件・問い合わせ2,227件・許容CPA149,701円。単価500万円は200件・1,667件・250,000円。単価1,500万円は67件・838件・746,269円。
図4|単価3パターンの逆算(売上10億円・粗利率25%・広告費は粗利の20%・当社による試算)

必要な受注件数と、問い合わせ数

受注件数は割り算だけです。10億円 ÷ 300万円 = 334件(月27.8件)。500万円なら200件(月16.7件)、1,500万円なら67件(月5.6件)。

問い合わせ数は、ここに成約率で割り戻します。単価が上がるほど検討期間が延びて成約率は下がるので、300万円で15%、500万円で12%、1,500万円で8%と置きました。すると必要な問い合わせ数は年2,227件(月186件)/年1,667件(月139件)/年838件(月70件)になります。

※ 成約率の15%・12%・8%は仮置きの数字です。公的統計には存在しません。自社の数字がある方は、必ずそちらに差し替えてください。差し替え方は後述します。

1件あたりの粗利と、許容CPA

1件あたりの粗利は、単価 × 粗利率です。75万円/125万円/375万円。ここから広告費の上限が決まります。

年間の広告費を粗利の20%=5,000万円と置くと、受注1件あたりの許容獲得単価(CPA)は149,701円/250,000円/746,269円。さらに成約率で割ると、問い合わせ1件あたりの許容単価は22,452円/29,994円/59,666円です。

問い合わせ1件あたりの許容単価を示した横棒グラフ。単価300万円で22,452円、500万円で29,994円、1,500万円で59,666円。
図5|問い合わせ1件にかけられる金額(単価帯別・当社による試算)

広告費の総額は、単価が5倍違っても変わりません

表をもう一度見てください。年間の広告費は、3パターンとも5,000万円です。単価が300万円でも1,500万円でも変わりません。

理由は単純で、広告費を粗利の総額から決めているからです。売上10億円・粗利率25%なら粗利は2.5億円で、その20%は5,000万円。単価が何であろうと、ここは動きません。

変わるのは配り方です。単価300万円の会社は5,000万円を2,227件の問い合わせに配るので1件2.2万円。単価1,500万円の会社は838件に配るので1件6.0万円。単価帯が違う2社が同じCPAを目標にしているとしたら、どちらかは必ず間違っています。

この数字が出ると、広告の良し悪しを一言で判定できるようになります。単価300万円の会社で、問い合わせ1件が3万円かかっているなら、その広告は赤字です。許容は22,452円ですから、8,000円ほど超えています。年2,227件で換算すると約1,681万円の超過で、営業利益5,000万円の3分の1が消える計算です。

超えているときの打ち手は3つしかありません。①成約率を上げる ②粗利率を上げる ③広告以外の入り口を増やすです。①と②は許容単価そのものを押し上げ、③は広告に配る件数を減らします。「CPAを下げる」は打ち手ではなく結果なので、この3つのどれかに手を付けないと動きません。

目標CPAの決め方そのものは、Google広告の自動入札が今日から変わります。目標CPAを「実績に合わせて下げる」前に確かめることにも書きました。

粗利率が1ポイント動くと、どれだけ効くか

粗利率を22%から28%まで動かしたときの営業利益の表。25%で5,000万円、24%で4,000万円、22%で2,000万円。
図6|粗利率を1ポイントずつ動かしたときの営業利益(売上10億円・販管費2.0億円・当社による試算)

売上10億円なら、粗利率1ポイントは1,000万円です。営業利益が5,000万円ですから、1ポイントの上下で営業利益が2割動きます。

現場の感覚に翻訳します。単価300万円・334件の会社で、1件あたり3万円だけ値引きしたとします。3万円 × 334件 = 1,002万円。営業利益の2割が、ここで消えます。

もっと踏み込むと、全件を5%値引きすると営業利益はゼロになります。1件あたり15万円です。「15万円くらいなら」という判断が全件で積み上がると、会社の利益がなくなる、ということです。

値引きの出どころが見えなくなる原因については、リフォームの原価率に業界平均はありませんの「一式見積もり」の章に書きました。

この数字の使い方と、使えない場面

仮置きの数字は3つあります

この記事で公的統計に根拠が無い数字は、粗利率25%・販管費2.0億円・成約率(15%/12%/8%)の3つです。残りはすべて、この3つからの四則演算か、公的統計の実数です。

自社の数字に差し替える順番の表。1販管費、2成約率、3粗利率の順に置き換える。
図7|自社の数字に差し替える順番(当社の手順)

差し替える順番は、販管費からです

いちばん正確に出せるのが販管費だからです。決算書の販売費及び一般管理費をそのまま持ってくれば終わります。次が成約率で、これは問い合わせ台帳と受注台帳を突き合わせれば出ます。粗利率を最後にするのは、ここがいちばん手間がかかるからです。

粗利率を自社で出す手順は、材料費・労務費・外注費の3費目に割るところから始まります。この手順は記事020に4ステップで書いてあります。

この逆算が使えない場面

単価帯が大きく混ざっている会社では、平均単価で割ると実態から外れます。新築3,000万円とリフォーム200万円を平均して1,600万円で計算しても、どちらの現実にも当てはまりません。その場合は事業ごとに分けて、それぞれで逆算してください。

紹介とリピートが多い会社も、そのままでは当てはまりません。この逆算は334件すべてを広告で取りに行く前提になっています。紹介が3割あるなら、広告で取るのは234件。必要な問い合わせ数も1,560件に減り、1件あたりの許容単価は32,051円まで上がります。紹介の比率を先に引いてから逆算してください。

また、この計算は問い合わせがすべて同じ質だと仮定しています。実際には営業メールやボットが混ざり、成約率を押し下げます。その見分け方は問い合わせのCVに営業メールが混ざると、自動入札は歪みますにまとめました。

よくあるご質問

Q. 広告費は「粗利の20%」でいいのですか

A. 20%は当社が支援現場で置いている目安で、公的な根拠はありません。粗利の何%を新規獲得に再投資するかは、自社の成長段階で変わります。既存客からの紹介が強い会社なら10%で足りますし、新規エリアに出るなら30%でも足りません。大事なのは「売上の何%」ではなく「粗利の何%」で置くことです。売上基準だと、粗利率が落ちたときに気づけません。

Q. 問い合わせ月186件は、現実的な数字ですか

A. 単価300万円で10億円を狙うなら、必要な数です。現実的かどうかは、いまの問い合わせ数と比べてください。月20件なら9倍です。そこで初めて「単価を上げるか、件数を増やすか、10億円の時期を後ろにずらすか」という判断になります。逆算の目的は、この判断を数字の上でできるようにすることです。

Q. 経常利益率は何%を目標にすればいいですか

A. まず建設業全体の5.4%を超えることを最初の線に置くのが分かりやすいと考えています。会社標本調査では建設業の法人の57.2%が赤字なので、5.4%はすでに上位の水準です。ただしこれは全体の平均であって、リフォーム会社の目標値として国が示したものではありません。自社の過去3期の実績と並べて決めてください。

まとめ|追うのは問い合わせ数ではなく、粗利です

今日から始められる3つを示した表。決算書から販管費を持ってくる、問い合わせ台帳と受注台帳で成約率を出す、粗利の20%を12で割って月の広告費上限を出す。
図8|今日から始められる3つ(当社の運用)
  • 広告費の総額は粗利で決まります。単価が5倍違っても5,000万円で変わらず、変わるのは問い合わせ1件あたりの許容単価(2.2万円〜6.0万円)です
  • 10億円に必要な問い合わせは、単価300万円なら年2,227件(月186件)です。いまの件数と比べると、目標までの距離が一目で分かります
  • 粗利率1ポイントは営業利益の2割。全件5%の値引きで営業利益はゼロになります

10億円という目標は、334件の受注と2,227件の問い合わせと、2.5億円の粗利に分解できます。分解してしまえば、あとは毎月の数字と比べるだけです。目標が遠いのではなく、分解されていないから遠く見えているだけということが、よくあります。

「売上目標はあるが、必要な問い合わせ数が分からない」を、数字にするところから。

株式会社NEXTORIAは、工務店・住宅会社・リフォーム会社に特化したAI×Webマーケティング支援を行っています。自社の販管費と成約率をこの逆算に当てはめ、月あたりの必要問い合わせ数と広告費の上限までご一緒に出します。

AIコンサルティングサービスの詳細を見る

出典

関連コラム

マーケティングのご相談はお気軽に

サービスに関するご質問や資料請求など、
お気軽にご相談ください。

無料相談受付中